旧耐震?新耐震?中古住宅を選ぶ時に知っておきたい耐震性の話
2022年09月16日
2024年11月21日
近年、中古マンションや一戸建てを購入してリノベーションをするという選択肢が定着しつつあります。しかし、地震が頻繁に起こる日本だからこそ中古住宅の耐震性は大丈夫なのかと心配になる方もいるのではないでしょうか。耐震性というのは築年数だけで判断することは難しいです。
今回の記事では、耐震性のチェックポイントについてお話しします。中古住宅の購入+リノベーションを検討されている方は、是非ご確認ください。
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旧耐震基準と新耐震基準の違いは?
耐震基準とは、建築基準法及び建築基準法施行令により定められた、建築する建物が最低限満たすべきと規定した耐震性能の基準のことです。基準をクリアしなければ建築確認の許可が下りず建物を建てることが認められていません。また、その判断基準となるのは住宅の竣工(完成日)ではなく、建築確認を取得した日となります。建築確認の日付は「建築確認済証」または市町村で「建築確認台帳」で閲覧することができます。
耐震基準には「旧耐震基準」と「新耐震基準」の2つの基準があります。それぞれの基準の違いは、以下の通りです。
【旧耐震基準】
旧耐震基準とは、1950年から1981年5月までに確認申請された建物の耐震基準です。10年に1度発生すると考えられる震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損しても補修すれば生活が可能な構造基準が設けられています。
しかし、この基準は震度6以上の想定がされていませんでした。1978年6月12日に宮城県沖地震(最大震度5)で甚大な被害を受け、建築基準法が改正されることになりました。
【新耐震基準】
1981年6月1日以降から施工された耐震基準は新耐震基準と呼びます。新耐震基準では、震度6強~7程度の揺れでも建物が倒壊しないことを想定しています。耐震基準の境目は建築確認日を確認します。1981年5月31日までに確認申請された建物は旧耐震、1981年6月1日以降はすべて新耐震基準です。
新耐震基準が制定された後も、大きな地震が発生し耐震基準が見直されました。中でも1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災は、多くの木造建築物が倒壊しました。これを受け、2000年6月に建築基準法の改正を行い、特に木造建築物に対する新耐震基準の強化がされています。
上記の説明を見ると新耐震基準の建物が良いと思う方も多くいらっしゃるかと思いますが、旧耐震基準の建物でも新耐震基準以上の耐震性がある建物も存在するのと、また戸建ての場合、耐震改修をすることが可能なため、検討から外してしまうのはもったいないです。次に、旧耐震基準と新耐震基準の特徴についてもう少し深く解説していきます。 -
旧耐震基準の中古住宅のメリット・デメリット
メリット・物件価格が安い
最も大きなメリットとして挙げられるのが、周辺相場と比べて物件価格が安いという点です。物件価格が安ければその分リノベーションの費用に充てることができます。水回りの位置や間取り変更を行う際は費用もかかるので、大規模なリノベーションを行いたい場合は、安価な物件を購入するのも1つの選択肢です。
・良い立地の物件が多い
駅から近いなど利便性の良い立地には、既にマンションやビルが建設されています。そのため土地が非常に出にくく、新しい建物を建てることができません。要するに好立地には旧耐震基準の物件が多いのです。立地や周辺環境を重視して物件を購入したい方は旧耐震基準の物件を選択肢に入れることをおすすめします。
デメリット・修繕積立金が高い場合がある
マンションを購入した場合、毎月修繕積立金の支払いが発生します。段階増額積立方式を採用しているマンションは、築年数が経つごとに修繕積立金が高くなっていきます。また、初期の修繕積立金額の設定が低く資金不足が想定される場合も値上がりする可能性があります。
・住宅ローンの審査が通りにくい
旧耐震基準の物件は住宅ローンの審査が通りにくいと言われています。住宅ローン審査の基準は借入する本人の返済能力だけでなく、担保となる不動産の評価も行います。担保評価は、周辺の同程度の物件売価から物件の築年数や構造によって評価額を加減して決定します。その際に旧耐震基準の物件は資産価値が低いと判断されてマイナス要因になることが多く、住宅ローン借入額に制限がかかります。
・税制面の優遇措置を受けられない
旧耐震基準で建てられた建物を購入する場合、税制面の優遇措置がありません。登録免許税、不動産所得税などの物件購入時に発生する各種税金や住宅ローン減税などは、原則現行の耐震基準に適合している住宅であることが条件の一つになっています。但し、税制改正により旧耐震基準の建物でも、現行の耐震基準に適合している証明書となる「耐震基準適合証明書」を提出すれば、優遇措置を受けられる可能性があります。
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新耐震基準の中古住宅のメリット・デメリット
メリット・比較的安全性が高い
先述の通り、新耐震基準は震度6強~7程度の揺れでも建物が倒壊しないことを想定しています。そのため、旧耐震基準の物件に比べると安全性が高いと言えます。
・フラット35の適用もできる
フラット35とは、勤続年数や職業などに制限が少なく、より幅広い人が利用できる住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱っている住宅ローンのことです。その他にもいくつか建物技術基準が存在しますが、住宅の耐震性は「建築確認日1981年(昭和56年)6月1日以後であること」つまり新耐震基準の場合、フラット35の適用がされます。
・税制面の優遇措置が受けられる可能性がある
旧耐震基準の物件は税制面の優遇措置を受けられないとお話ししましたが、新耐震基準の建物は税制上優遇されます。諸条件を満たすことで、住宅ローン減税、登録免許税・不動産取得税・固定資産税の軽減が受けられる場合があります。
デメリット・物件価格が高い
一般的に築年数が浅いほど物件価格が高い傾向にあります。それゆえに旧耐震基準に比べて新耐震基準の物件の方が物件価格が高くなります。
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旧耐震基準の住宅を購入する前に確認しておきたいポイント!
最後に、購入希望物件が旧耐震基準の住宅だった場合に確認しておきたい事項をお伝えします。
◎壁式構造でつくられているか
鉄筋コンクリート造は「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類の建物構造に大別されます。壁式構造は壁と床で箱型を作り建物を支える構造になっており、ラーメン構造よりも頑丈で地震に強いと言われています。
◎管理状況や修繕履歴
マンションを購入する際は、過去にどのような管理をされており、定期的なメンテナンスが行われているのか知っておくことが大切です。管理が行き届いているかは、管理状態や修繕履歴、今後の修繕計画の有無、管理費や修繕積立金の水準、修繕積立金滞納の有無などを確認すると良いでしょう。
◎耐震診断の有無
購入希望物件が耐震診断を受けているのか確認しましょう。耐震診断の結果により、リノベーションする際に耐震補強が必要になるのかを判断できます。
◎地盤の強さ
地盤の強さは地震の揺れに影響があり、地盤が強い場所に建てられた物件は揺れが少なくなります。地盤の状態は、国土交通省や自治体が公開しているハザードマップなどで確認できます。
本当に耐震性に問題ないのかと自分自身で判断するのは難しいと思います。物件を購入してから失敗したと後悔しないためにも、不動産に関するプロに相談をしながら話をすすめましょう。
また、旧耐震基準に限らず新耐震基準の物件でも建物の維持管理が行き届いていない物件もあります。適切なメンテナンスがされていなければ、その分建物の劣化は早まります。いずれにせよ物件を購入する際は築年数や、旧耐震か新耐震かで判断するのではなく、建物の管理状況を確認しておく必要があるでしょう。 -
まとめ
今回は旧耐震基準と新耐震基準の建物の特徴についてお話ししました。新耐震だから必ずしも安全で、旧耐震だから耐震性がないということではありません。旧耐震基準の建物でも新耐震基準を満たすものもありますし、耐震性に不安があるとき、戸建ての場合は耐震補強工事を行うことで安心して長く住み続けることができます。
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このコラムの執筆者
大竹 理沙