水回りの移動はいくら費用がかかる?リノベーションのプロが解説!
2023年01月16日
2024年12月19日
住宅において無くてはならないのが、水回りと言われる浴室・キッチン・トイレ・洗面などの住宅設備。リノベーションにおいて、水回りの配置計画は家事動線を含む使い勝手に大きく影響してきます。
しかし、水回りを大きく動かすとお金が掛かってしまい、予算を圧迫するのではないかと考える方も多いでしょう。そこで今回のコラムでは、間取り変更や水回り移動を伴うリノベーション工事の予算をどのように考えなければならないかプロの目線から解説します。リノベーションをご検討中の方は、是非ご確認ください。
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そもそも水回りの移動は可能なの?
ライフスタイルの変化だったり使い勝手が悪く家事のしにくさを感じる場合、水回りが使いやすい場所に移動できたらいいですよね。まず大前提として、水回りを大きく動かすことは可能なのでしょうか。
答えとしては、排水・給水給湯・排気のルートがしっかりと確保出来れば移動可能です!
ただし、水回りの移設にはいくつか制限がかかることがあります。
戸建てであれば比較的移動の自由度が高いですが、マンションは管理規約により水回りの移動を禁止していたり配管の移動に様々な制約があります。
水回りが移動できるかどうかは床下の排水管の状況が判断のポイントです。マンションは外部からの給排水のために最上階から1階まで配管を貫通させる配置となるのが一般的で、この配管から各専有部分に配管を繋げて給排水をしています。この配管はPS(パイプスペース)とよばれ、共用部分にあたるので位置を移動することはできません。移動できるのは各専有部分に繋げられた配管で、スムーズに給排水するためには排水管に勾配をつける必要があります。床下に勾配をつけれるだけのスペースや高さが無い場合は、PSから離れた位置への水回り移動は困難ということがあります。
特に、マンションにおいてトイレの配置は特別動かしにくいとされています。トイレはキッチンやお風呂とは違って汚水が流れるので雑排水と比べて詰まりが起こりやすく、できるだけPSに近い場所で計画する必要があります。 -
水回りを移動する時の注意点
水回りを移動する際には、設備のサイズや間取りの変更、配管や電気工事など、さまざまな要素を考慮する必要があります。特にマンションでは、建物の構造や管理規約により制限がある場合もあるため、計画前にしっかり確認しておくことが大切です。ここでは、水回りの移動時に気をつけたいポイントをまとめましたので、順を追ってご紹介します。
①新しくする設備のサイズや移動後の間取りを確認してスペースを確保する
お家をリノベーションする場合、ライフスタイルの変化やより快適な暮らしを目指してリノベーションを行う方が多いと思います。しかし、水回りの移動によって、もともとのお住まいよりもトイレや脱衣室が狭くなり、暮らしにくくなることは避けたいですよね!
水回りの移動は間取りに制限がかかりやすい部分なので、設計士と相談しながらじっくり決めていきましょう!
②給排水だけではなく、ガスや電気、換気ダクトの工事などを行う必要がある
水回りには、給排水以外にもキッチンのコンロに必要なガス、照明機器の電気、レンジフードの換気扇に関連する換気ダクトの工事が必要になります。
これらは基本的に天井に隠れているため、ガス、電気、ダクト工事と合わせて内装も一緒に変更する必要があります。
マンションの場合、梁と呼ばれる構造体によってこれらの移動に制限が生じるため、給排水以外の部分でも注意が必要です。
③床に段差ができることがある
水回りを移動する際、排水の勾配が必要になることについて説明しましたが、床を1段上げて勾配をとる方法があります。
戸建ての場合、床下にスペースを確保して段差ができないようにすることが可能ですが、マンションにお住まいの方は特に注意が必要です。
④天井高が低くなる可能性がある
床に段差をつけたくない場合、全体的に床の高さを上げることがあります。
マンションの場合、躯体と呼ばれる構造体の高さに制限があるため、床を上げることで天井高が低くなる可能性があります。
⑤新しい水回りの位置で十分な水圧がとれるかどうかを確認する
マンションの場合、高層階になればなるほどトイレの排水で水圧が足りなくなってしまうことがあります。必要水圧が足りなくてタンクレストイレがつけれなかったり、ブースターをつける必要が出てくる可能性があるため注意しましょう。
戸建てでも同様に、2階や3階に水回りを持ってくることで水圧が足りなくなることがあります。戸建ての場合、特に注意した方が良いのが『お風呂』です。ほとんどの住まいで給湯器が1階にあるため、シャワーの水圧が下がってしまうことがあります。 -
どうして水回りの移動には費用がかかるの?
そして本題になりますが、リノベーションの計画可能な配置で間取り変更をした場合に、「水回りを移動するのにこんなにも金額がかかるの?」と驚く方もいるかと思います。果たしてどのような事が理由で費用がかかってしまうのでしょうか。
まずは「間取り変更しない工事」と「間取り変更を伴う工事」の工数を比較してみていきます。
▶間取り変更しない工事の工数
1.現状の解体
2.建具/住宅設備の設置
3.仕上げ工事
▶間取り変更を伴う工事の工数
1.現状の解体
2.現状の下地の解体
3.配管関連・電気関連の移設工事
4.新しい下地の作成
5.建具/住宅設備の設置
6.仕上げ工事
上記から、間取り変更を伴う工事は2~4番目の3つの作業工程が増えていることが分かります。
次に、費用の比較をしてみます。
《マンション80㎡をフルリフォーム・フルリノベーションする場合を想定》
▶間取り変更しない工事の費用相場
約800~1,000万円
▶間取り変更を伴う工事の費用相場
約1,200~2,000万円
つまり、間取り変更を伴う工事の3工程の増加分として約500万円程度かかってきます。ここが間取り変更が費用がかかると言われている大きな要因となります。
※今回ご紹介した例はマンション80㎡の場合のため、施工面積や物件により金額の変動がございます。
間取り変更をいずれにせよ行うという前提の中で、水回りの場所による工事費用としては配管の延長する費用のみになりますので、一般的には10~30万円程度に留まることが多いです。
すなわち水回りを大きく動かすと、結果的に間取り変更をすることが多いので費用がかかってしまうということになります。 -
水回りを移動する時のコツ
水回りの移動を含めたリノベーションをする場合のコツをご紹介します!
間取りを考える際、自分の生活の中で一番重要視する点は何か?今の暮らしで不満を感じる点はどこか?を考えるのがポイントです。
*食事に特化した間取り(パントリー→キッチン→ダイニング)
日々の生活の中で、料理をしたり食事をしたりする環境を一番整えたい!という方におすすめの間取りの考え方です。キッチン付近にパントリーを設け、料理の効率を上げるとともに、完成した料理をすぐにダイニングテーブルに運ぶことができる間取りが人気です。玄関から入ってすぐにパントリーを設ける案もあります!
▼間取り図
*洗濯に特化した間取り(洗濯室→干場→WIC)
洗濯をする際の動線を確保して、効率的な暮らしがしたい方におすすめです!洗濯物をどこに干すか(室内干し、ベランダ、サンルーム等)によって変わりますが、洗う、干す、片づけるを一連の流れで行えるような間取りです。流行りの回遊動線にすることで、洗濯以外の部分でも効率的な暮らしを送ることができます。
▼間取り図
*お風呂に特化した間取り(洗面所→脱衣室→浴室)
一日の疲れを癒すお風呂の環境を整えることで、クオリティ・オブ・ライフを向上させたい方におすすめです!
メイクを落とす場所、髪を乾かす場所、スキンケアをする場所など、家族構成やライフスタイルに合わせた使い勝手を考えることが大切です。洗面所と脱衣室を分けたい、洗面を広くしたい、浴室のサイズをどうするかなど、検討すべきことは多くあります。何から決めたらいいか分からない方は、ぜひ一度プロに相談してみましょう。
▼間取り図
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水回りの移動を含むリノベーション事例
最後に、実際にKULABOで水回りを移動したリノベーション事例をいくつかご紹介し、それぞれの工夫やポイントをお伝えします。快適な生活を実現するためのヒントが満載ですので、ぜひ参考にしてください。
▼before間取り
▼after間取り
キッチンを中心とした間取りです。閉鎖的なキッチンから対面式のキッチンにしたことで開放感溢れる空間になりました。
▶施工事例を詳しく見る
▼before間取り
▼after間取り
キッチン、お風呂、洗面脱衣室、WICのすべてで回遊動線を確保した間取りです。キッチンへのこだわりはもちろん、暮らしやすさも追求しました。
▶施工事例を詳しく見る
▼before間取り
▼after間取り
戸建ての事例です。キッチンを主役にした間取りですが、お風呂、洗面脱衣室、物干しスペースまでの動線も確保しています。
▶施工事例を詳しく見る -
まとめ
水回りの住宅設備は、15~20年ぐらい経過したらリフォームリノベーションするタイミングであると言われています。「せっかくリノベーションするのならもっと使い勝手がいいように水回りの位置も変更したい!」と検討されている方は、事前に経験豊富なリフォーム会社に相談し、調査してもらうことをおすすめします。
今回ご紹介した内容を踏まえ、KULABOではもともとの水回りの位置や間取りを極力活かしながら、新たな動線や使い勝手を生み出せるように、細かい寸法での提案を心がけています。例えば、通常通路幅は800㎜程欲しいというところを、パントリーや家事動線など使う用途が限られている場合は550㎜で計画しても実は不便ではなかったりするのです。そういった沢山の工夫をお客様に合わせて考え提案することで、予算を抑えつつも素晴らしい生活環境を作れたらと思っております。
物件ごとに違いが大きい内容になりますので、今回紹介した内容はあくまでも参考となります。
「どこまで間取り変更が可能なの?」「どれぐらい費用がかかるの?」とお悩みをお持ちの方!KULABOでは無料で現地調査の依頼を受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。
このコラムの執筆者
村松 杏摘