リノベーションのプロが本気で考える!新築建て替えVSリノベーション
2023年02月14日
2024年11月12日
「新築を建てる=憧れ」であった時代からは時は流れ、当時建てられたたくさんのお家がそろそろ大きな改修を必要とする時期に入ってきています。そんな中、建て替えをするのか、リノベーションをするのかといった悩みを抱えられている方が今後増えていくのではないでしょうか。
その中でも、耐震性や間取りの自由度の面において建て替えの方が良いのでは…といった声や意見を多々耳にします。そこで今回は、リノベーションという選択肢の可能性に着眼し、リノベーションのプロとして徹底考察していきたいと思います。
CONTENTS
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そもそも建て替えとリノベーションの違いは?
建て替えかリノベーションにするかを検討するうえで、まずはそれぞれの違いを知る必要があります。そもそも両者にはどのような違いがあるのでしょうか。まずは、一般的に考えられる違いを上記のような表にまとめてみました。
このように表にまとめてみると、リノベーションの方が費用は安くなるけれど、建て替えの下位互換なのでは…と感じられる方も多いでしょう。実際、世の中のほとんどの方はそう思われていらっしゃるかと思います。
しかし、私はそれは間違いだと考えています。それぞれの選択肢にメリットデメリットは同じように存在しており、そこを把握したうえでどちらが相応しいかをしっかりと判断することが何よりも大切だと思っています。
それでは、次の章からは具体的に上記の内容に沿って、リノベーションの可能性について考察していきましょう! -
特徴①工事範囲
基本的に建て替えは家全体を解体するのに対して、リノベーションはすべてを解体するわけではありません。逆に言えば、”解体する範囲を自分で決められる”といった自由度がそこにはあります。
「思い出の詰まった部屋だから、洋室は解体せずにLDKのみ新しくつくり変えたい!」
「お風呂だけは数年前に新しく変えたから、解体するのは勿体ない!」
というような思いがある場合は、自ら工事範囲を選定して気になる部分だけを改装することができるのです。
私はいつもこのことを、”費用の密度を自由にできる”と表現しています。
建て替えの場合、必ず全てを一新するのでまんべんなく費用がかかってきます。しかし、リノベーションでは費用をかける所とかけない所を上手くわけることで調整できます。但し、家の形や広さをそもそも極端に変更したいなどはリノベーションでは不可能なので、そこはご自身の今後の生活イメージやご要望と照らし合わせる必要があります。 -
特徴②間取りの自由度
前章では、工事範囲を自由に設定できることを理解していただけたかと思います。
しかし、構造的に抜けない壁や柱、筋交いと呼ばれる斜めの木材などはそのまま残ってしまうため、建て替えに比べてリノベーションの方が間取りの自由度が低いと思われる方も多いでしょう。
そこを考察していくには、今の家がどんな構造なのかを理解することが大切です。これに関しては大きく2つのパターンに分けられます。
▶パターン1.木造住宅の場合
木造住宅の場合、確かに壊せない筋交いや柱などが残ることがあります。しかし、他の物に代替することと、移設することは可能です。
例えば、筋交いはコボットと呼ばれる比較的スッキリとした物に代替することができ、構造的に問題がなければ違う場所に移せる可能性もあります。さらに、柱や梁などは意匠として空間のアクセントや主役にすることもできます。
建て替えの場合でも、木造であれば構造的につくれる空間には制限があります。大きな空間をつくろうとするとどうしても壁や柱などが空間に現れてきます。したがって、この部分に関しては”建て替えもリノベーションも意外と大差がない”と言えます。
▶パターン2.重量(軽量)鉄骨造・RC造の場合
重量(軽量)鉄骨造、RC造は比較的間取り変更がしやすいです。それどころか、建て替えの際は建設費用に加えて元の家を取り壊す解体費用がかかり、重量(軽量)鉄骨造・RC造は木造に比べても取り壊しの費用が高くなってしまいます。この点においてもリノベーションの方が適しているかもしれません。 -
特徴③耐震
耐震に関しては、3つの要素が重要になってきます。それは「構造」、「築年数」、「劣化度合い」です。
「構造」に関しては、上述した「木造」と「重量(軽量)鉄骨造・RC造」の2パターンと同じ分け方で考えられます。
重量(軽量)鉄骨造・RC造の場合、そもそも家のつくり自体は木造に比べると強い傾向にあります。そのため、間取りの変更もしやすいうえに、耐震も安心できるといったリノベーション向きの構造と言えます。また建て替えするのは多くの費用がかかるため、リノベーションをしていきながら長く住み続けられる家の構造だとも言えます。
木造の場合の方が検討する点は多いです。
「築年数」に関しては、別のコラム「旧耐震?新耐震?中古物件を選ぶ時に知っておきたい耐震性の話」でも詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
基本的にリノベーションも建て替えも、工事する職人が大きく異なるわけではありませんので、建て替えの耐震工事と同じような工事をリノベーションで行うことができます。補強には耐震補強だけでなく制震補強など様々な方法があり、それらの補強を適材適所に行うことで費用的にも必要な範囲のみで耐震補強が行えます。
しかし、ここで検討するべきはその工事範囲です。そして、工事範囲を考えるうえで「劣化度合い」も重要になってきます。劣化箇所が多いと、補強や補修する箇所が多くなってくるため、費用がかかってきてしまいます。劣化が激しい場合は、どれだけ工事で強くしても本来の家の力が弱くなってしまっているので、一層建て替えた方が耐震的には強くなる可能性も出てきます。
このように、「構造」、「築年数」、「劣化度合い」を総合的に判断しなければ、建て替えかリノベーションかどちらが相応しいのか分からないのが難しい所です。私はこの3つの数値の総合値を、”家のポテンシャル”と表現しています。しっかりとリノベーションのプロの目線で家を判断し、家のポテンシャルを知ることが何よりも大切です。
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特徴④費用
ここまでいろいろと述べてきましたが、費用に関してはそれぞれの章でも触れてきました。新築は、㎡単価や坪単価など必ずお金がかかる部分が大きいですが、リノベーションの場合は自身で費用の密度を変えられることで、極端に工事をしなくていい部分があれば全体の費用も削減が出来ます。
また、それにより自分のやりたいことや、憧れのデザイン、水回りの設備など、お金をかけたいところによりこだわることも出来るのです。それだけでなく、外構工事、造成工事、擁壁工事など建て替えでしかかからない費用も多々ありますので、総合的にリノベーションの方が費用を抑えやすいと言えるでしょう。 -
まとめ
今回は建て替えVSリノベーションを考えていくうえで、リノベーションの可能性に着眼して解説をしてきました。実際このように考えてみると、リノベーションという選択肢にはこんなにも自由と幅があり、可能性があるのかと感じてもらえたのではないでしょうか。
とは言うものの、すべての建物がリノベーションをするべきかというとそうではありません。下記の内容に当てはまる方は、建て替えをおすすめします。
・家の大きさを極端にかえたい方
・もともとの家の主要構造部がかなり劣化してしまっている方
裏を返せば、それ以外の方は様々な観点から、リノベーションという選択肢を一考するメリットはあると言えます。しかし、そこまで深く考えず、イメージや固定概念でリノベーションという選択肢を消してしまっている方も多いと思います。
まずは、”家のポテンシャルを知る”→”費用の密度を考える”ことが大切だと私は考えます。
KULABOでは、現地調査~プラン作成、見積りまでを無料で提案することができます。その他ご相談も無料で受け付けておりますので、今回のコラムを見て少しでもリノベーションという選択肢に可能性を感じていただけましたらご相談くださいませ。
このコラムの執筆者
原 佑帆