軽量鉄骨造のリノベーションは本当に難しい?失敗例と成功ポイントを紹介

2025年11月08日

軽量鉄骨造は耐久性が魅力ですが、構造上の制約や断熱対策の難しさから、「リノベーションは難しいのでは」と不安を感じる方も少なくありません。

しかし、専門知識とノウハウがあれば、制約を乗り越え、その耐久性を最大限に活かした快適な住まいを実現することができます。

今回のコラムでは、軽量鉄骨造が「難しい」と言われる理由と失敗例の解説や、間取り・耐震・断熱などで失敗しない具体的な成功ポイントをKULABOの実例を通してご紹介します。ぜひ参考にしてください♪



  • 軽量鉄骨造とは?住宅の特徴

    日本の住宅の主な構造は、上記画像にあるように【木造】【鉄骨造】【鉄筋コンクリート造】【鉄骨鉄筋コンクリート造】の4つに分けられます。

    鉄骨造は、「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分けられます。この基準となるのが鋼材の厚さです。

    ・軽量鉄骨造: 鋼材の厚さが6mm未満のもの
    ・重量鉄骨造: 鋼材の厚さが6mm以上のもの

    主に軽量鉄骨造は、大手ハウスメーカーの戸建住宅や、比較的築年数の新しい住宅で広く採用されています。この構造の特性を理解しておくことが、軽量鉄骨造のリノベーションをするうえで大事なポイントとなってきます。



    *軽量鉄骨造の特徴

    ①耐久性・強度が高い

    鉄骨を使用しているため、木造と比較してシロアリの被害や腐食による劣化が少なく、適切な設計により高い耐久性や耐震性を発揮します。



    ②法定耐用年数が長い

    軽量鉄骨造は、その構造材が鉄であることから耐久性が高く、寿命も長いです。*法定耐用年数は木造が22年に対し、軽量鉄骨造は鋼材の厚さによって27年または34年と長く設定されています。
    *法定耐用年数・・・税金計算のために法律で決められた建物の価値が減る期間



    ③断熱性能が低い

    軽量鉄骨造などの鉄骨造の住宅は、「断熱性能が低い」と言われることが多く、リノベーションを検討する際の一つの懸念材料となりがちです。しかし、現在お住まいの軽量鉄骨の住宅で万が一「寒い」と感じる場合であっても、断熱リノベーションを施すことで断熱性能を向上させることができます。

  • 軽量鉄骨住宅をリノベーションするメリット

    「軽量鉄骨造のリノベーションは難しい」というイメージを持つ方もいらっしゃいますが、実際には木造やRC造にはない、多くのメリットが存在します。ここでは軽量鉄骨リノベーションの4つの主なメリットについて解説していきます。



    間取りの変更が可能

    軽量鉄骨造は「間取りを変えにくい」と言われがちですが、専門知識を持つ会社に依頼すれば解決できます。構造を活かした*ブレース(筋交い)あらわしのデザインなどによって、木造では難しかった広いLDKや柱の少ない開放的な大空間を実現できます。
    *ブレース(筋交い)あらわし・・・耐震のための補強材である「筋交い(ブレース)」をあえて隠さず、デザインとして空間に見せる手法。



    施工期間が短め

    軽量鉄骨造の大きなメリットは、工事がスピーディーに進められる点です。主要な部材が工場で徹底管理のもと生産されるため、品質が非常に安定しており、現場で部材を選り分ける手間がありません。また、部材が軽量で加工もしやすいため、現場での作業時間が大幅に短縮されます。



    耐震性や耐久性を向上できる

    もともと軽量鉄骨造は、鉄骨の特性により木造よりも長寿命で耐久性に優れています。リノベーションを行う際には、この長寿命な構造躯体を最大限に活かすことが可能です。最新の基準で構造や基礎をあらためて見直すことで、既存の耐震性を現代の要求レベルまで向上させることができます。



    設備や内装の品質を向上できる

    軽量鉄骨造の住宅は、大手ハウスメーカーが独自の厳しい基準で建てたものが多いため、もともと品質の高い躯体や部材が使われています。リノベーションでは、この良質な躯体を土台とし、老朽化した設備や古くなった内装を一新できます。最新の高性能なキッチンやバスルーム、断熱性の高い窓や建材に入れ替えることで、住まいの快適性や利便性が飛躍的に向上します。

  • 軽量鉄骨住宅のリノベーションが「難しい」と言われる理由

    *間取り変更の自由度が制限される

    軽量鉄骨造は、部屋の仕切り壁を取り払う際に、壁内に斜めに対角線に張られている筋交い(ブレース)が邪魔になり、間取り変更の大きな制約となる場合があります。このブレースは、建物の耐震性や耐久性を担う重要な補強材であり、安易に撤去することができません
    また、一部のメーカーの住宅では、壁自体が構造の一部となっているため、壁の位置を変更しづらいという側面もあります。そのため、木造に比べて減築・増築の難易度が非常に高いと言えます。



    *配管や配線の工夫が必要

    軽量鉄骨造の構造フレームは、木造の柱や梁と比べて配管や配線を通すための自由なスペースが少ない場合があります。
    特に水回り設備の位置を大幅に変更する際には、排水管の勾配を確保するために床の高さを調整するなどの緻密な設計が求められます。また、壁内や床下に配線を通す際のスペースの制約が、電気配線計画や照明計画にも影響を及ぼすことがあります。



    *耐震や断熱改修の調整が必須

    軽量鉄骨造は耐久性が高い反面、断熱性に課題を持つ物件が多く存在します。その原因は、鉄骨の柱や梁が熱を伝えやすい「*熱橋(ヒートブリッジ)現象」を起こしやすく、結露やカビの原因になるためです。
    快適な住環境を実現するには、一般的な方法ではなく、高性能な断熱材を使用し、鉄骨構造に合わせた専門的な断熱改修の調整が必須となります。この適切な改修が、軽量鉄骨造で快適な住空間を作る鍵です。
    *熱橋(ヒートブリッジ)現象とは・・・建物内部と外部の熱の移動が、断熱性の低い部分(鉄骨の柱や梁)を伝わって集中的に起こる現象のこと。



    *小規模なリフォームは対応が難しいケースもある

    軽量鉄骨造の多くは、大手ハウスメーカー独自の工法と規格部材で作られています。
    このため、既存の構造体に合わせた専用の部材や工法が必要となることが多く、ちょっとした修理や小規模なリフォームの場合でも、部材の手配や施工の難易度が上がってしまうことがあります。汎用的なリフォーム会社では対応が難しく、結果としてコストが高くつく、あるいは工事を断られるケースも多くあります。

  • 軽量鉄骨リノベーションでよくある失敗例

    軽量鉄骨造は構造が特殊なため、その特性を理解せずに計画を進めると、設計変更や予算オーバーといった失敗につながりかねません。ここでは、リノベーションで特に注意が必要な4つの失敗例をご紹介します。



    ①構造壁を撤去できず計画が変更になった...。

    「壁をなくして広いリビングにしたい」という希望はよく聞きますが、軽量鉄骨造では、建物の耐震性を担う筋交いが入った構造壁は安易に撤去できません。構造調査を十分に行わずに設計を進めた結果、いざ工事に入ろうとして撤去不可が判明し、間取りや家具配置、生活動線に大きな影響が出てしまうという失敗例が多く見られます。このような事態を避けるためにも、初期段階での構造調査の徹底が大事なポイントです。



    ②水回り移動に膨大な追加コストが発生した...。

    水回りを大きく移動させる計画で、配管の制約を見落とした結果、当初の予算を大幅に超える追加コストが発生することも多くあります。軽量鉄骨造の床下は、配管を通すスペースが木造よりも制限されがちです。設計の段階で配管のルートを緻密にシミュレーションしておくことが重要です!



    ③断熱補強を後回しにしたため冬の寒さが改善されなかった...。

    これは「軽量鉄骨だから仕方ない」と断熱改修を軽視した結果、冬の寒さや結露が全く改善されないという失敗例です。鉄骨造は、鉄骨の柱や梁が熱を伝える熱橋(ヒートブリッジ)現象が起こりやすい特性があります。この熱伝導性質を無視した設計では、壁内部にいくら断熱材を入れても効果が薄く、冬季の室内温度が改善されません。構造を考慮した専門的な断熱補強を行わなければ、リノベーション後の快適性は得られません。



    ➃配管制約を見落とし使い勝手が悪化した...。

    配管スペースの制約を見落とした結果、完成後に「使い勝手が悪い」と感じる失敗例です。例えば、キッチンカウンターの奥行きが配管の都合で予定より浅くなったり、洗面台の位置が希望よりもずれたりすることで、毎日の生活動線が不便になることがあります。また、排水の勾配確保のために意図せず床に段差ができてしまったり、水が流れにくいといった配管トラブルが発生したりするケースもあります。

  • 軽量鉄骨住宅のリノベーションを成功させるポイント

    軽量鉄骨造のリノベーションは、その特性ゆえに注意すべき点が多い反面、適切な知識と技術があれば、耐久性の高い長寿命で快適な住まいを実現できます。ここでは、後悔しないリノベーションを実現するための3つの成功ポイントをご紹介します。



    ✓間取りや空間の使い方を工夫する

    軽量鉄骨造では、耐震性を担う筋交い(ブレース)や構造壁を撤去できない制約を逆手に取ることがポイントです。撤去できない柱やブレースを意匠的なフレームとして「あらわし」に見せたり、カウンターと一体化させたりすることで空間のアクセントとして活用します。この制約を生かした工夫により、開放感を保ちながらデザイン性の高い空間を実現できます。



    ✓構造や耐震、断熱、配管の計画を抑える

    軽量鉄骨造リノベーションの失敗を避けるためには、目に見えない構造や設備の計画を初期段階で徹底することが必須です。鉄骨の熱橋(ヒートブリッジ)現象を考慮した専門的な断熱改修や、水回り移動のための配管スペース・勾配の綿密な計算が欠かせません。これらを初期設計に実施することで、費用をコントロールし、リノベーション後の快適性と安全性を確保できます。



    ✓専門知識を持つリノベーション会社に相談する

    軽量鉄骨造はハウスメーカーによって構造や使用部材が異なるため、その構造を正確に理解し、過去の施工実績が豊富な会社でなければ、正確な診断と適切な施工ができません。
    初期段階で専門的な知識を持つ会社に相談することで、構造上のリスクを回避し、実現したい間取りを諦めることなく計画を進めることができます。


    ■会社選びのチェックポイント■
    ・耐震性や断熱・防音性能改善の実績があるか。
    ・構造上の制約を逆手に取ったデザイン提案力があるか。
    ・メーカー独自の規格部品や工法に対応できるノウハウがあるか。



    KULABOは、延べ2,500件以上の施工実績を活かし、軽量鉄骨造のような構造的な制約を持つ住宅に対しても、これまでの実績で培った暮らしやすさのための工夫やデザインのアイデアをご提案しております。調査から設計、施工、リノベーションまで一貫してサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • KULABOのリノベーション事例紹介

    リノベーション施工事例

    45°がつくるリビングのカタチ

    愛知県

    築年数:18年

    間取り:(before)4LDK→(after)2LDK+WIC

    リノベーション費用:約1,470万円(2024年施工)


    一見邪魔に見えるリビング中央の柱は、軽量鉄骨造の構造上残さざるを得なかった柱を活かしたものです。この柱をキッチンカウンターと一体化させることで、リビングとダイニングを自然に仕切る役割を持たせています。




    リノベーション施工事例

    造作箇所満載な戸建リノベーション

    愛知県愛知郡東郷町

    築年数:23年

    間取り:(before)5LDK→(after)5LDK


    構造上撤去できない柱は、あえて空間デザインの一部として塗装し、意匠的なアクセントとしました。TV台やダイニングテーブル、棚といった家具の多くを造作で仕上げており、細部にまでこだわりが詰まったお住まいです。




    リノベーション施工事例リノベーション施工事例


    LDKから繋がる 庭のある暮らし

    愛知県岡崎市

    築年数:20年

    間取り:(before)3LDK+和室→(after)4LDK+和室

    リノベーション費用:約3,100万円(2024年施工)


    階段周りの構造体である鉄骨の筋交いをあえて現しにし、室内窓と一体化させたデザインを採用しました。これにより、光が通る開放的な空間を実現しています。




    リノベーション施工事例

    アンティークな質感漂う二世帯住宅化リノベーション

    愛知県

    築年数:31年

    間取り:(before)7DK→(after)5LDDKK+WIC


    鉄骨天井が見えるようにあえて、リビング天井は現しに。トグルスイッチや照明など、金属素材を上手く取り入れたデザインに仕上がっています。




    リノベーション施工事例

    梁と木で魅せる、戸建リノベ

    愛知県日進市

    築年数:約25年

    間取り:(before)4DK→(after)3LDK


    状態が良かった既存の梁や柱を残し、わざと躯体を見せることで天井が高く、デザイン性のある空間に仕上がったお住まいです。


  • まとめ

    軽量鉄骨造のリノベーションは、構造や断熱対策など独自の注意点がある反面、耐久性の高い躯体を活かせるのが大きな魅力です。成功させるには、構造を正確に把握し、制約をデザインとして活かす専門的な工夫がポイントとなります。

    KULABOは、延べ2,500件以上の施工実績と、軽量鉄骨造に関する豊富なノウハウがあるため、様々なご提案をさせていただくことが可能です。軽量鉄骨造のリノベーションをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。



このコラムの執筆者

KULABOのスタッフ

林 果凛

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