マンションの床リノベーション|人気の床材や費用相場、選び方を解説
2023年04月20日
2025年11月01日
マンションのリノベーションを検討中の方にとって、床材の選択は家の印象と快適性を大きく左右する最も重要な決断の一つです。
戸建てとは異なり、マンションの床リノベーションには「管理規約による遮音性能の制約」という特有のハードルが存在します。この制約を理解せずに素材を選んでしまうと、規約違反による工事のやり直しや、予期せぬ費用高騰を招きかねません。
本コラムでは、リノベーションで特に人気の高い床材を徹底比較し、それぞれのメリット・デメリットや一般的な費用相場を解説します。暮らし方やマンションの条件に合わせた失敗しない素材選びのポイントと注意点をわかりやすくご紹介しているので、理想の快適な住まいを実現するための参考にしてみてはいかがでしょうか。
CONTENTS
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マンション床リノベの基本:遮音性と施工方法のポイント
集合住宅であるマンションでは、戸建住宅と異なり、居住空間の床に高い遮音性能が求められます。遮音性能の基準は「L値」と呼ばれる数値で表され、マンションの管理規約で細かく定められていることがほとんどです。
「L値」・・・床の衝撃音が下の階に伝わるレベルを示す指標で、遮音性能を表す等級。数値が小さいほど遮音性能が高い。
多くのマンションでは、L値=45以下の等級が床構造に求められる一つの目安となっています。
床材の中でも、畳やカーペットは比較的遮音性能が高いとされていますが、居室でL-45の遮音等級を確保しつつ、畳やカーペット以外の床材を採用する際は、特定の遮音工法が必要になります。
ここからは、L-45の遮音等級を有している主な工法について紹介します。
直張り工法
マンションの構造体にあたる床に、遮音性のあるクッションが付いた木質フローリングを貼り付けていく工法です。一般的な工法で、もともとのマンションの床構造も直貼り工法で建築されていることが多いです。
広く普及した工法で安心感のある施工となる一方で、選べる床材の色柄のバリエーションが少ないため、理想に近しい床材が無い場合もあります。
二重床工法
遮音性能のあるゴムがついた支持脚で床材の下地となるボードを持ち上げて、その上に床材を貼ります。この二重床構造自体で遮音が可能なため、床材の制限も無くなります。選べる床材の色柄が豊富になり、施工範囲によっては段差のない住まいにしたり、水回りの配管や電気配線を二重床の中で回すことも可能です。一方で、費用が必要であったり、床が上がることで天井高が低くなったりする場合もあります。
このほか、既存の防音構造(直貼り工法など)を活かして、一部の床材だけを上貼りする方法も可能です。費用を抑えられるメリットがありますが、既存の床の状態が良いことが条件で、床鳴りや表面の凹凸が発生する場合があります。
最終的には、マンションごとの管理規約や理事会の判断に従う必要がありますが、KULABOでは管理会社への工事確認も行いながら施工をサポートします。
続いては、フローリングの表面仕上げに注目し、マンションリノベーションで良く採用される床材を紹介します。 -
マンションリノベで人気の床材6選:特徴・メリット・デメリットを徹底比較
①無垢フローリング

無垢フローリングは天然木の一枚板から作られた床材で、木本来の風合いや肌触りを体感できます。合板と比べて足腰への負担が少ない上に調湿機能に優れているため、夏はサラッと、冬は暖かく快適に過ごせます。また、時間の経過とともに、深みのある色に変化していく様子を楽しむことが出来るのも魅力です。
メリット
・木の柔らかさや温かみがあり、歩行感が良い
・経年変化を楽しめる
・多少の傷は補修可能
・調湿性、断熱性に長けている
デメリット
・湿度や温度によって熱膨張、収縮が起こりフローリング同士の間に隙間ができてしまう
・メンテナンスが大変
・傷やヒビが入りやすい
・価格が高い
適した部屋 リビング、寝室、和室続きの居室など、肌触りを重視したい空間。 向いている人 自然素材の質感や足触りを重視する人、経年変化を楽しみたい人。 おすすめメーカー WOODONE、マルホン、プレイリーホームズ、アトピッコハウス 施工方法 直貼り工法、二重床工法
②挽板フローリング

挽板フローリングは、表面に本物の木を貼って仕上げます。表面材の厚みは、2mm〜3mmで、見た目や足触りの温かみなどは、無垢フローリングとほとんど変わらず、経年変化も楽しめます。多層構造を持つ複合フローリングなので、天然木の一枚板である無垢材と比べて、温度や湿度の変化による反り、伸縮、ひび割れなどが起こりにくいのが特徴です。
メリット
・無垢材と比較すると、安価に木本来の風合いを楽しむことができる
・突板より分厚い板で仕上げるため、より凹凸や感触が無垢材に近い
デメリット
・合板フローリングの中では高級
・無垢フローリング同様にメンテナンスが必要となる
適した部屋 リビング、ダイニング、無垢材の質感を保ちつつ、床暖房を使いたい部屋。 向いている人 無垢材の風合いを求めつつ、反りなどのリスクを抑えたい人、機能性も重視したい人。 おすすめメーカー 朝日ウッドテック、イクタ、DAIKEN、EIDAI 施工方法 直貼り工法、二重床工法
③突板フローリング

突板フローリングも挽板フローリング同様、表面のみ本物の木を貼って仕上げます。表面材の厚みは0.3〜0.5mm程度と、挽板フローリングと比べて厚みに大きな違いがあります。表面材が薄いことで、天然木の使用量が少なく済み、無垢材や挽板フローリングに比べてコストを抑えられるのが特徴です。
メリット
・無垢や挽板より手軽に木本来の肌触りを実現できる
・天然木部分が少ないことで、膨れや縮みが少ない
・表面の塗装によっては手入れが楽
デメリット
・ちょっとした傷で表面の木がめくれて基材が見えてしまう
・無垢、挽板ほどの質感は出ない
・塗装がはがれると劣化する
適した部屋 居室全般、遮音性を求められる場所。 向いている人 天然木の美しい木目を楽しみつつ、コストや安定性を重視したい人、傷に強いタイプを選びたい人。 おすすめメーカー パナソニック、LIXIL、朝日ウッドテック、DAIKEN 施工方法 直貼り工法、二重床工法
④シートフローリング

シートフローリングは木目や石目をプリントしたシートを合板に貼って仕上げた床材です。耐水性・防汚性に優れており、日常のメンテナンスが非常に楽なため、一般的な住宅に広く普及しています。また、色や柄のバリエーションも豊富で、幅広いデザインを実現できます。
メリット
・デザインの種類が豊富(印刷技術も向上している)
・低価格
・膨れや縮みが少なく、メンテナンスしやすい
・汚れに強くお子様やペットがいる家庭にも採用しやすい
デメリット
・天然木のような質感はない
・天然木ほどの柔らかな歩行感はない
・防水性はあるが、シートが劣化すると補修できない
適した部屋 居室全般、子供部屋、傷や汚れを特に避けたい場所。 向いている人 メンテナンスの手軽さを最優先する人、デザインの均一性や耐久性を求める人、リーズナブルに仕上げたい人。 おすすめメーカー DAIKEN、LIXIL、パナソニック 施工方法 直貼り工法、二重床工法
⑤フロアタイル

フロアタイルはビニル素材でできたタイル状の硬質な床材です。耐水性に優れているため、遮音のいらない洗面やトイレに施工されることが多く、木目調・石目調・モルタル調・テラコッタ調など、デザインのバリエーションが非常に豊富です。
メリット
・耐水性、防汚性、清掃性に長けている
・デザインのバリエーションが非常に豊富
・傷やへこみに強い
・材料自体は安価
・フロアタイル1枚ごとの交換が可能なためメンテナンス性に優れている
デメリット
・硬く冷たい歩き心地
・防音性がないため、マンションに貼るには二重床構造が必要
適した部屋 土足で歩く場所、玄関、水や汚れが気になるキッチン、洗面所。 向いている人 高級感のある石目やモルタル調のデザインを好む人、高い耐久性や耐水性が必要な場所に採用したい人。 おすすめメーカー TOLI、サンゲツ、シンコール、リリカラ 施工方法 二重床工法
⑥クッションフロア


クッションフロアは塩化ビニールを主原料としたシート状の床材です。ロール状で販売されているので、継ぎ目が少なく施工の手間が省けます。クッション性や防音性にも優れており、お子様がいる家庭でも安心です。また、材料費・施工費ともにコストを抑えることができるため、採用する方も増えています。
メリット
・クッション性がある
・撥水性、防汚性が高く掃除がしやすい
・デザインが豊富
・コストが抑えられる
デメリット
・耐久性が低い
・通気性が悪い
・高級感に欠ける
適した部屋 洗面所、トイレ、脱衣所、キッチンなど、水はねが気になる場所。子供部屋。 向いている人 とにかくコストを抑えたい人、水や汚れなどの手入れのしやすさを最優先する人、足への負担を軽減したい人。 おすすめメーカー サンゲツ、TOLI、リリカラ、シンコール 施工方法 のり付け工法、重ね張り工法 -
マンション床リノベの費用相場と予算感
ここまで様々な床材をご紹介しましたが、
「理想の住まいを実現したいけれど、床リノベーションの費用感が掴めない…」
そんな疑問をお持ちの方もいると思います。
ここからは、各床材の一般的な費用相場と予算感を詳しく解説していくので、是非参考にしてみてください。
施工費込みの費用相場 6畳(約10㎡)の目安総額 予算感のポイント 無垢フローリング 15,000円〜35,000円/㎡ 15万円〜35万円以上 高級かつ最も高価。マンションで採用する場合は、防音対策が必須となるため費用が高くなりがち。 挽板フローリング 15,000円〜30,000円/㎡ 15万円〜30万円 高級感と機能性の両立。無垢材に近い質感があり、複合材の安定性も兼ね備える。 突板フローリング 12,000円〜20,000円/㎡ 12万円〜20万円 木の質感と安定性のバランス。表面に天然木の薄板を使用しているため木の質感を楽しめる。複合材のため扱いやすい。 シートフローリング 8,000円〜15,000円/㎡ 8万円〜15万円 複合フローリングの普及価格帯。手入れが簡単で耐久性に優れる。マンション用の遮音タイプも豊富。 フロアタイル 4,000円〜8,000円/㎡ 4万円〜8万円 安価で高耐久。リアルな石目や木目があり、耐久性・意匠性が高い。 クッションフロア 3,000円〜6,000円/㎡ 3万円〜6万円 最も安価。耐水性・清掃性に優れ、主に水回り(トイレ、洗面所)や居室に採用される。デザイン豊富。 -
失敗しない床材選びのポイントと注意点
リノベーションにおいて、床材の選択は家の印象を決定づけるだけでなく、日々の快適さにつながる非常に重要な要素です。デザインの好みだけで選んでしまい、「冬は足元が冷たい」「傷が目立って後悔した」「マンションの管理規約違反になってしまった」といった失敗例は少なくありません。
この章では、理想の暮らしを叶え、快適な住まいを維持するために、床材選びで決して見落としてはいけない4つの重要なポイントと注意点を解説します。
*ライフスタイルに合わせる
床材は単なる内装材ではなく、日々の生活にどのように影響するかを考える必要があります。例えば、小さなお子様がいるご家庭では、転倒時の衝撃を緩和できるクッションフロアや柔らかい無垢材が適していますが、無垢材は傷がつきやすいという注意点もあります。一方、ペットがいる場合は、爪で傷がつきにくく、清掃しやすいシートフローリングやフロアタイル、滑りにくい加工が施された床材が安全です。また、素足で過ごすことを重視するなら、天然木の温かみと調湿性を持つ無垢フローリングや挽板フローリングが最適と言えます。ライフスタイルや家族構成を踏まえ、水回りや居室など、それぞれの空間に最適な機能を持つ床材を選ぶことが成功の第一歩です。
*遮音性能を確認する
特にマンションなどの集合住宅において、床材の選択で最も重要なのが遮音性能の確認です。管理規約で義務付けられている「軽量床衝撃音遮音等級(LL-45など)」に違反すると工事のやり直しを命じられる可能性があります。そのため、居室のフローリングには、裏面に特殊な緩衝材が貼られた「遮音複合フローリング」を選ぶことが必須となります。天然木の一枚板で作られた無垢フローリングは基本的に遮音性が低いため、規約上採用できないか、採用する場合は「乾式二重床工法」や「遮音マット」といった大掛かりな追加工事が必要となり、費用が大幅に高騰する点に注意が必要です。
*メンテナンス性を考慮する
床材の種類によって、日々の掃除のしやすさや将来的な補修の手間が大きく異なります。水回りに使用されるクッションフロアやシートフローリングは、表面がビニールや樹脂でコーティングされているため、水や汚れを弾き、水拭きやワックスフリーで手入れが非常に簡単です。対照的に、無垢フローリングは水濡れを放置するとシミになりやすく、美しい風合いを保つために定期的なオイルメンテナンスが必要となります。また、フロアタイルは傷んだピースだけを部分的に交換できるため補修が容易ですが、シートフローリングや突板フローリングは深い傷がつくと基材が露出しやすく、部分的な補修が難しいという性質があります。日々の手間をどこまで許容できるかを考慮し、メンテナンス計画に合った床材を選ぶことが大切です。
*予算を明確にする
床材のリノベーション費用は、「材料費」と「施工費」で構成されます。一般的に、材料費はクッションフロア・フロアタイルが最も安価で、天然木に近い挽板フローリング・無垢フローリングが高価になります。しかし、材料費だけでなく、施工費の変動要因も把握しておく必要があります。特に、既存床の撤去・処分を伴う「張り替え」工法は、既存床の上に重ねて貼る「重ね張り」工法よりも高くなります。さらに、マンションの防音対策が必要な場合は、遮音フローリングの材料費自体が高いことに加え、下地処理や二重床の組み込みといった追加工事費が発生し、トータルの予算が大きく膨らみます。デザインや質感を追い求める前に、まずは予算の上限を明確にし、その範囲内で「遮音性」と「耐久性」といった機能的な優先順位を決めることで、失敗のない床材選びが可能になります。
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KULABOの実例で見る床リノベーション

シャープな空間で健やかに暮らす
愛知県名古屋市
築年数:15年
間取り:(before)4LDK→(after)4LDK
竣工年月:2023年5月
10年後20年後、家族のライフスタイルが変化することを見据え、既存設備を再利用しながらデザインを刷新。目の粗いフロアタイルの床材を使用することで、柱と新しいキッチンがうまく調和し、さらにお子様の食べこぼしや、床が傷付く心配もなくなりました。

BARのある大人空間へのリノベーション
愛知県名古屋市天白区
築年数:45年
間取り:(before)4LDK→(after)1LDK+パントリー+WIC+ワークスペース
リノベーション費用:約1,230万円
竣工年月:2019年8月
古材とセメント系素材を用いたお洒落なBARのようなカウンターキッチン。LDKの床は無垢フローリングをメインに、キッチン部分のみモルタル調のフロアタイルを使用し、BAR空間をより一層強調しています。

上質な美しさを感じさせるシンプルモダン空間
愛知県名古屋市
間取り:(before)3LDK→(after)3LDK+WIC
リノベーション費用:約1,640万円
竣工年月:2022年9月
落ち着いた色調にまとめたシンプルモダンなインテリア。白を基調とした壁や天井、キッチンとは対照的に、明るくナチュラルなオークの床材で温もりをプラスすることで、無機質になり過ぎないように工夫を凝らしています。
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まとめ
マンションの床リノベーションは、単に床材を新しくするだけでなく、ご自身のライフスタイルを向上させ、集合住宅での快適性を確保するための重要な選択肢です。
本コラムで解説した通り、それぞれの床材には異なる費用相場とメリット・デメリットがあります。
特にマンションでは、「管理規約で定められた遮音性能をクリアすること」が、近隣トラブルを避けるための最優先事項となります。これを踏まえ、予算と求める機能性を明確にした上で、賢く素材を選びましょう。
KULABOでは、お客様のご希望に合わせた最適な床材選びや工法のご提案をさせていただきます。
是非お気軽にご相談ください。
このコラムの執筆者
菅野 雅之











